セブン&アイ、米コンビニ買収断念
セブン&アイ・ホールディングスは米コンビニ「スピードウェイ」の買収を断念しました。スピードウェイはガソリンスタンドにコンビニを併設した「給油ついでの買い物」をビジネスモデルとしたコンビニとなります。
国内でのコンビニ市場は飽和状態でこのままでは成長を期待できないセブン&アイ・ホールディングスにとって買収すれば米国でのコンビニ店舗数を大幅に増やせるチャンスでしたが、2兆円以上という巨額な買収費用がネックになり買収断念となったようです。
アメリカの買い物事情
日本ではコンビニは徒歩、日々の食材は自転車でスーパーへ買出しにというのが一般的ではないでしょうか?もちろん駐車場が完備された大型のSC(ショッピングセンター)へ自動車で向かう人もいると思いますが多数派ではないと思います。
ではアメリカの買い物事情はどのようなものなのでしょうか?
自動車でウォルマートやコストコなどの大型SCへ買い物に行くというのが一般的なようです。場所にもよると思いますがアメリカでは歩行者や自転車で移動している人を見かけません。アメリカは広大な面積の国ですから離れた点から点(家から店)を自動車で移動する「自動車必須社会」なんですね。
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電気自動車の台頭
これまではガソリンスタンド併設型コンビニへ「ついで買い」を誘うビジネスモデルで成功してきたのかもしれませんが、今後は「電気自動車(EV)の台頭」という問題があります。
電気自動車はガソリンスタンドを必要としません。もちろん併設されたコンビニにも行く必要がありません。買い物に行くにしても”小さな”コンビニに行くのではなく、”大きな”ウォルマートかアマゾンのようなネットショップにアメリカ市民は向かうでしょう。
EVは普及する
もちろん電気自動車にもガソリン車と比べ劣る部分はたくさんあります。代表的なものは以下の通り。
- その①:走行距離
- その②:充電場所
- その③:高価格
などが挙げられます。多くの人はこういった点を指摘して「電気自動車は普及しない」と言います。しかし電気自動車がガソリン車と比べ圧倒的に有利な点があります。それは、
部品点数が少ない
ことです。かつて液晶テレビが
- 部品点数が少ない
- 部品があれば誰でも作れる
- 価格の下落スピード
があって、日本の家電メーカーが軒並み没落した歴史があります。自動車業界にも同じことが起きて将来50万円程度で性能のいい自動車が量産できるという話もあります。そんなとんでもない低価格で、安い燃費(電気代は安い)で電気自動車が売り出されたらガソリン車が全滅することは無くても
”
大きくシェアが落ちる
↓
ガソリンスタンドへの客足減
”
なんてことが予想されます。
転換期にカモにされる日本企業
ある意味、電気自動車の台頭は”これまでのルール”の転換期に直面しているということです。
そういうこともあってこれまで「スピードウェイ」を運営してきたマラソン・ペトロリアム社も売却の打診をしたと考えられます。ガソリン車がこれまでのように幅を利かす時代が続くのであれば売りに出すこともなかったでしょうから・・・
DeNAの場合
2010年にDeNAは米国ngmoco社を最大4.03億ドル(約342億円)で買収しました。しかし
- 2016年にDeNAはngmoco社の解散を発表
- 2019年Googleはクラウドゲーム開始
- 2020年DeNAは「上場以来初めてとなる3Q決算で赤字になった」と発表。
DeNAは10月18日の取締役会でサンフランシスコに本社を持つ米国現地法人DeNA Global, Inc.の解散と清算を決定した。併せてDeNA Globalの子会社でスマートフォン向けにゲーム開発・販売を行っていたngmoco, Inc.も解散する。
アニメーションビジネス・ジャーナル
DeNAは日本の優秀な人材を集めて経営されている会社だと思いますが、ngmocoの買収から始まり、クラウドゲームの出現を挟んで、上場以来初の赤字までの流れを見ると「カモにされた」印象をどうしても受けます。スマホゲームの凋落手前、もっとも価値の高い時に売りつけられたのではないでしょうか?
ngmoco=スピードウェイ?
今回の買収検討にあたって米セブン―イレブン社長のジョセフ・デピント氏は「絶好のチャンス」として買収を後押しされていたようですが、個人的な感想としてはセブン&アイ・ホールディングスは買収しなくてよかった、カモにされなくて良かったのではないでしょうか。
ただ
- 海外売上高
- ネット販売
の拡大はセブン&アイ・ホールディングスにとって今後も課題として残るわけですから、これからの動きに注目です。