吉野家HD、「フォルクス」を安楽亭に売却。両社のIRから詳細を読み解きます
12月26日吉野家ホールディングスは、持ち株率100%の子会社で「フォルクス」などを運営するアークミールを安楽亭に売却すると発表しました。両社から出されたIR情報、公開された資料から各社の状況と今後の展開を紹介します。
アークミールの状況
関東・関西を中心に「ステーキ」「しゃぶしゃぶ」「イタリアン」のレストランチェーンを運営する会社です。ただイタリアンといっても埼玉県に2軒お店を展開されているだけですからアークミールは、
- その①:「肉」の会社
- その②:高単価のレストラン運営
と言えるでしょう。
【サラダバー】
日本で初めてサラダバーを始めたのはフォルクスだそうです。
赤字に
吉野家ホールディングスから出されたIR資料を見てみると2019年決算は減収減益で赤字に転落したようです。
決算期 | 2017年2月期 | 2018年2月期 | 2019年2月 |
---|---|---|---|
売上高 | 22,754百万円 | 22,406百万円 | 20,205百万円 |
営業利益 | 182百万円 | 212百万円 | △930百万円 |
経常利益 | 148百万円 | 229百万円 | △947百万円 |
当期純利益 | △306百万円 | △140百万円 | △2,116百万円 |
吉野家HDの状況
傘下の外食チェーンは以下の通りです。
- 「吉野家」「はなまるうどん」「京樽」⇒和食ファーストフード系
- 「フォルクス」など運営のアークミール⇒肉レストラン系
元の社長の安部さんが「総合的外食産業を目指す」ということで買収に力を入れた時期もあったようですが、現在の傘下チェーンを見るとアークミールだけは「肉系」「高単価のレストラン」で少し外れた存在にも見えます。
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【吉野家の牛丼は別格?】
牛丼は吉野家・松屋・すき屋と提供されていますが、吉野家が売っているのは「吉牛」、その他の会社が売っているのは「牛丼」という話があります。吉野家だけ「吉野家の牛丼が食べたい」というファンやブランドが確立されていて、価格競争に打ち勝つ強みがあるという話です。
安楽亭の状況
傘下のチェーンは以下の通りです。
- 「安楽亭」「七輪房」などの焼き肉レストラン
- 「ネイザンロード」中華レストラン
中華レストランは埼玉県にある1軒のみなので、安楽亭は焼き肉レストランのお店といえます。
こう見るとフォルクスを展開するアークミールは吉野家よりも安楽亭に近い事業内容だとわかります。
【優待はどうなる?】
それぞれ傘下の店舗で使える「サービス券(吉野家)」と「ギフトセットと割引券(安楽亭)」の株主優待があります。安楽亭の株主にとってはうれしい買収になりましたね。
要チェック 安楽亭の最新IR・株主優待を見てみる
吉野家HD、安楽亭にとって今回の買収・売却は良かったのか?
吉野家HDの目線は〇〇に向いている
今回吉野家ホールディングスから出されたIRの一部を引用します。
2008年2月に当社の連結子会社となった後、主要セグメントの1つとして、国内事業の成長に貢献を果たしてまいりましたが、一方で外食産業を取り巻く環境は厳しさを増し、大きな変革を求められている中、当社としては事業ポートフォリオの最適化を図り、成長事業へのリソース配分を戦略的に進めるべく、本株式譲渡を行うことが最善との結論に至りました
吉野家ホールディングスIR「 特定子会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ 」
ざっくり読むと、
- その①:吉野家を大きくするために買収したが
- その②:あれから10年、日本は人手不足・人口減少で大変に
- その③:これからは海外展開に力を注ぎます
と読み解けます。
吉野家ホールディングスは1975年にアメリカで初めての海外出店を果たし、現在は海外1500店の出店を目指し、グローバル体制の確立を目指すとあります。
目線の先は国内ではなく、海外に向いているようです。
【中国にも出店】
今回の発表の6日前には中国・安徽省に吉野家1号店を出店するとIRが出ていました。上海・南京の近く。三国志で有名な地名・合肥のある場所です。
安楽亭にとって買収はどういう効果があるのか?
安楽亭から出されたIRをまたまたざっくり読むと
- その①:政府の政策(消費増税など)で原材料上がった・・・
- その②:でも景気いまいちなのでお客さんの財布のひもは固い
- その③:人手不足で大変
と読み解けます。
ただ両社のIRに共通しているのはアークミールは吉野家にいるより安楽亭に行った方が幸せになるよと書かれています。
【人間同士に例えると】
僕といるよりあの人と結婚した方が幸せになるよ、みたいな感じでしょうか?
安楽亭の海外展開
海外展開は目指すも、本格始動はまだ先の話という感じです。2030年にグローバル展開して売り上げ1000億円を目指すそうですが、海外展開は2017年にベトナムに1号店を出店したのが初ですから、吉野家と比べるとまだまだということでしょう。
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【まとめ】吉野家HD、安楽亭にとって今回の買収・売却は良かったのか?
- その①:安楽亭にとってシナジー(相乗効果)がある
- その②:「肉」メインの安楽亭は安くていい買い物をした
- その③:吉野家は今後海外出店を加速
個人的な感想では安楽亭の「焼肉」「ステーキ」などは他社が簡単に参入できる料理に思えます。また私の個人的な感想ですが「安楽亭」という看板に特段のブランド力を感じません。
しかし片や吉野家は「牛丼」「うどん」というスーパーでも売られているごく庶民的な食べ物を提供していますが「吉牛」「はなまる」という強力なブランド力を持っています。
ブランド力強化が成長のカギ
今後の海外展開で日本でいう「ハンバーガー」と言えば「マクドナルド」のような強力なブランド力を構築できるかが成長のカギになるように思いました。
リポート
最近2年ぶりにフォルクスへ行ってきました。